間取り診断のハウス設計 住宅計画基礎知識
Ⅱ 住宅計画の全体計画
1 住宅の内外の環境
徒然草は「家のつくりやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる」と言っている。高温多湿の日本では、風通しのいい夏向きの家がいいということである。住宅設備機器に頼らず1年中快適に過ごすなど、快適でエコな家づくりは技術の発達した今でも基本であることは間違いない。
(1)日照(日当たり)
1) 日照計画
建物の向きや形、窓面積、地形、樹木(落葉樹など)など考慮して、夏は日照を遮り、冬は取り入れるように計画する。
2) 日照調整(サンコントロール)の方法
- 軒・ひさし・ルーバー・バルコニー ※軒・ひさしは夏の日差しは防いで、冬の日差しは取り入れるのに有効。ただし、西日には効果なし。西日を防ぐのに効果的なのは、縦型の格子やルーバー。
- 熱線吸収ガラス
- カーテン・ブラインド
(2)日射
- 日射を受ける面の熱効果は、その面の方位・材質などで異なるが、南面の受ける日射量は、冬季に多く、夏季に少なくなるので、南面は日照とともに最も良い方位である。
- 水平面の夏季の日射量は極端に大きくなるので、屋根の断熱(特に陸屋根)が必要である。
- 夏季の西日対策も重要。
(3)採光
- 採光とは、外の光によって必要な明るさを得ることをいう。
- 同じ面積の窓の場合、横長よりも縦長の窓の方が室の奥まで明るくなる。
- 天窓(トップライト)は側窓の3倍明るくなる。
- 高窓(高い位置にある窓)も天窓同様、室全体を明るくするには有効である。
(4)風通し
- 風通しを良くするには、夏の最多風向(一般的に南風・南東風)に向けて大きく窓をとることが基本。
- 風を取り入れる袖壁も有効。
- 風が入ってくる窓の反対方向に、風の抜ける窓があると一層効果的。
(5)換気
- 外の新鮮な空気を取り入れて、室内の汚れた空気を排出することを換気という。
- 換気を良くするには排気口は天井近く、吸気口は床近くに設け、吸排気口の距離を大きくすると良い。
- 排気口と吸気口が向かい合う壁にあったら、さらに効率は良くなる。
- 台所、浴室、洗面所、便所など、特に換気が必要な場合は機械換気(換気扇など)を使用すると良い。
(6)断熱・結露
- 断熱とは室内の熱を室外に伝わりにくくすること(あるいはその逆)。
- 断熱性能が悪いとエコでなくなると同時に、結露の問題も生じる。
- 壁などが結露すると、断熱性能が低下すると同時にダニやカビの問題も出てくる。
- そうならないためには、熱を伝えにくい材料(比重の小さいなど)を屋根や外壁に用いたり、建物の気密性を高めることが大切である。
- 結露防止には、必要以上に湿度を上げないよう換気することも大切。
(7)防音の方法
1) 遮音
コンクリートなど比重が高く、厚いものを用いると効果がある。気密性を高めることも大切。また、二重サッシも効果がある。
2) 吸音
ボード類(多孔質ボード類、有孔ボード、石膏ボード)や繊維質の素材(グラスウール、ロックウール、じゅうたん)を用いると効果がある。
3) 防振
音や振動の発生源を、ゴム、バネ、コルクなど弾性のある材料で支えて、振動を伝えないようにする。
※道路からの騒音対策
- 外部の騒音は、壁を重量の大きい材料で厚くし、窓の気密性を高める。
- 道路との距離を離す。
- 塀や樹木で遮る。
2 外観デザインの構成
外観デザインには多くのスタイルがあり、流行りもある。例えば、洋風(南欧、北欧、アジアン)、和風(数寄屋、町屋、古民家)、モダン(和モダン、洋モダン、シンプル)、ナチュラル(自然素材、エコハウス)、デザイナー風などである。
最近、和モダンとかシンプルモダンとか多く見かけるが、重厚なデザインや純和風なデザインを好んだり、エコハウスに関心を持つ人も少なくない。住宅は、長く住むものである。見た目のデザインだけではなく、住宅の機能、間取り、外構そして周囲の環境等を考え計画したい。
(1)外観デザインと構造の種類
どんな構造にするかは、外観のデザインだけでなく、周辺環境、敷地条件、予算、建物の規模、間取り、室内環境なども考慮して決めなければならない。
1) 木造
- 木材は鉄やコンクリートに比べて軽く、加工が容易でフレキシブルな間取りやデザインにも対応できる。
- 日本の伝統的な在来軸組工法は設計の自由度が高く、大きな開口部が取れるのが特徴で、リフォームもしやすい。
- 2×4(ツーバイフォー)工法は2インチ×4インチの木材が主に使用されている壁式構造であることから、開口部に制約される。
2) 鉄骨造
- 強度が大きいため、大きなスパンが可能である。
- 耐震性と耐久性があり、建築コストも比較的安い。併用住宅等に用いられる。
3) 鉄筋コンクリート造
- 耐震性、耐火性、耐久性に優れ、自由度の高いデザインが可能であるが、コストが高い。
(2)外観を構成する要素
1) 屋根
住宅のデザインに大きく影響するのが、屋根のデザインである。屋根の形が変わっただけで大きくイメージも変わる。また、屋根は雨風を防ぐものであるから、雨風に耐えられるような構造や材料にしたい。
《1》屋根の形状の種類と特徴
切り妻 (きりづま) |
|
|
---|---|---|
寄棟 (よせむね) |
|
|
入母屋 (いりもや) |
|
|
片流れ (かたながれ) |
|
|
方形 (ほうぎょう) |
|
|
陸屋根 (りくやね、ろくやね) |
|
《2》屋根材料の種類と特徴
- スレート系:セメントに繊維を混ぜて薄い板状にしたもので、安価で軽いが耐候性がない。
- セメント系:粘土瓦より若干耐候性に劣るが、安価で衝撃に強い。
- 瓦系:重くて高価であるが、断熱性・耐火性・耐候性能が高い。
- 金属系:軽量で安価で加工性・防水性・不燃性がよいが、断熱・遮音効果が少なく、錆や腐蝕に弱い。
2) 壁の種類と特徴
外壁材は、周辺環境との調和(特に色)、屋根の形状、壁の持つ機能(断熱性、耐久性、遮音性、メンテナンス性)、外観デザインとの調和など考慮して選択する。
《1》外壁の工法
湿式工法 |
|
---|---|
乾式工法 |
|
《2》外壁材の種類と特徴
モルタル壁 |
|
---|---|
サイディング壁 |
|
タイル壁 |
|
木製板ばり壁 |
|
3) 窓の種類
窓には、様々な開閉形式や取付け位置があり、用途や部屋に合わせて選ぶ。
《1》窓の開閉による種類
- 引違い窓:ガラス戸をスライドして開閉する窓。
- 横すべり出し窓:窓の横方向の上側を軸としてスライドし、下側を外に押し出して開閉する窓。
- 縦すべり出し窓:窓の縦方向の片側を軸としてスライドし、回転するように開閉する窓。
- 片開き窓:片側を固定し左右どちらか一方に開閉するガラス戸一枚の窓。
- 突き出し窓:ガラス戸の上を軸に下部を外側に押し出すように開く窓。
- 内倒し窓:ガラス戸の下を軸に上側が室内側に倒して開く窓。
- 外倒し窓:ガラス戸の下を軸に上側が外側に倒して開く窓。
- ルーバー窓(ジャロジー窓):数枚のガラスの細長い羽根板を組み合わせた窓。
- はめ殺し窓(フィックス窓):窓枠にガラスが固定されて開閉ができない窓。
- 出窓:建物の外壁より外側に張り出した窓。
- 折り戸:開いたときに折りたためる戸のある窓
《2》窓の位置による種類
- 掃き出し窓:開口部が床面の位置まである戸のある窓。
- 地窓:床面に接して設けられる高さの低い窓。
- 腰窓:床面から一定の高さをとった窓。
- 天窓(トップライト):屋根に設けられた窓。
- 高窓(ハイサイドライト):吹き抜けや高い天井近くの壁に設けられた窓。
掃き出し窓 | 地窓 | 腰窓 | 天窓 | 高窓 |
---|